やあ、日吉君、久しぶり。慶應に入って念願の大学生活を始めた君に今、足りないものはなんだい? そんな君に、今日はとってもHAPPYになれる話があるんだ。そうさ、あの彼女の電話だよ。(実際、金、暇、彼女、知識、箔……etc、本当に足りないものだらけだしね。) そう、電話。彼女は君に所属も名乗らず(友達だって最初は名乗るよな)、語りかけてくる。 「どうも、渋谷です。日吉さんに、今度始まるクラブのお誘いで電話をかけたんですよぉ」どうだい、このなれなれしさ。あまりにもうさんくさいよ。でも、もうちょっと我慢して聞いてごらん。彼女は延々とその会員権のことを話したあとで、こうつけ加える。 「繰り返しますが、これはセールスではありません。つきましてはちょっと遊びにでもくるつもりで、こちらに会員証を取りにきていただきたいのですが」 すごいぜ、なんだかよく聞いてなかったけど、こいつはマジすごそう、と、とりあえず約束した君は、メモを取らされる。取らされ方で一番変なのはこういうやつだ。 「それでは、メモの上から縦に、A,B,C,Dと書いてください。Aの横にはアポイント時刻、そう、その時刻を書いてください。Bは受け付け番号です。日吉さんはEH-0721ですね。で、Cのところは電話番号です。03-3511-78xx。で、Dは私の名前、渋谷 須比恵と書いてくださいね」(そうそう、今まで書き忘れていたけど、文中の団体名、個人名、各種番号やなんかは、全て仮称(仮名)だから、本気にしないでくれよ。こいつはこういった記事では鉄の掟だからな。) さあ、男の約束だ、君は彼女が何度も繰り返した「ハチ公前」に行ってその番号に電話。すると彼女は言うんだ。 「それじゃあ、そこのガードをくぐると、宮益坂という坂があります。そこを登っていくと、ファーストキッチンがありますので、そこで待っていてください。今、どんな服を着てますか?」(地名等もフィクションだからね。) いやあ、まるで高級ソープの出迎えサービスみたいだね。しかも、その予感は、彼女がまるで整形したみたいに二重まぶただったり、マニキュアが金色だったりで、どんどん強くなる。 |
「日吉さん、宮益坂ってわかりましたあ?わからない人、多いんですよね」なんて会話しながらエレベータで6階にあがられたりしたら、もう場末のヘルスと全然区別つかないし。 でも、その予感はエレベータを下りるとちょっと打ち砕かれる。目の前にはガラス張りの事務フロア、右手に見えるはなぜかビリヤード台、左手には観葉植物に、ね、熱帯魚。おお、バブルはここではまだ健在だったらしい。 そして、君はその左手側奥、何か薄暗い机に案内される。各机は仕切られていて、まるでピンサロだねえ、と思うのもつかの間、さっきの彼女とは別のお姉さんがおしぼり、じゃなかったアンケートを持ってやってくる。 このアンケートもなかなかすさまじい。「海外旅行は今まで何回行きましたか」「ハワイは今どのくらいで行けると思いますか」から始まって「今、あなたに足りないと思うものはなんですか」「今、欲しいもの、やりたいことはなんですか」最後に「あなたの人生の目的はなんですか」。まるで煩悩の固まりだ。 四苦八苦しながら答えて、最後に「やっぱ奄美大島でハーレム作るのが夢かな」なんて考えてると、くだんの彼女がコーヒー持って、片手に山ほどバインダー抱えて帰ってくる。で、アンケート見ながら話のきっかけ作っていく、と。 バインダーには何が入っているって?君、今から君のもらえる会員証の特典が説明されたパンフレットに決まっているじゃないか。 そう、この会社、すごいよ。1972年創業で資本金1500万のくせに年商75億(リラじゃなくて円だからね)、教育ビデオ製作が本業なのにダイヤモンド会社が系列だったりする。おまけにあの元東大の政経学者Mが顧問やってたりするから、ただものじゃないね。(わかってるね、これらはみんなフィクションだよ) 海の写真に3流コピーがついたあやしげなページをいくつかめくったら、そこからは夢の世界だ。内容は訳あって詳しくはかけないが……、とにかく激安、超豪華の企画が並ぶ。 |
あるCLUBにはいってもらえるこんな特典。
etc.いろいろ他にもある(裏もある)が、その50%も伝えられないのが残念!
- 毎年50名に西海岸他の旅をPresent。
- ビデオ&NATIVEによる英会話講習。
- マハラジャグループをはじめ、各種居酒屋、カラオケBOXの2割引。
- 激安海外旅行(ハワイ6日\65000)
- 北海道トマムのリゾートを始め、全国各地のホテルが\4000で(素泊まり)。
- 国内航空券の2割引(5割もアリ)。
- マツダのレンタカー半額。
- カバンから洋酒まで、各種ブランド品を輸入差益で激安販売。
- ねるとんパーティーへの参加権。
- 結婚にかかる全ての費用を割り引き(ダイヤの指輪含む)。
- チケット予約の代行and20%off。
- 住友不動産系SportsClubの会員利用。
- 中古車の下取り価格での販売。
バインダーと一緒に彼女が持ってきた写真、それはクラブ主催のねるとんパーティーのやつだ。赤坂や上野のクラブでとった写真。それは焚いたスモークのせいか妙に白っぽく、おまけにぎゅうぎゅう詰めに入った人のなかに、必ずピース出してる奴もいる、そんな写真……。 「このパーティー、私が主催したんですよお」そんな言葉も、もう君には快く感じられるはずだ。そして、山のようなバインダーを見終わる頃、君はアンケートの裏側に「アルファルファリゾートトマムや案比高原のホテルが1泊4000円だなんて、安くて感動した」(仮名ってことを忘れるなよ)なんて書かされてる。 さあ、ここから彼女の怒涛のマニュアル教育の賜物攻撃が始まるぞ。まず彼女は持ってきた藁半紙にでかでかとクラブの名前を書き、クラブの特典(ホテル割引とか、ブランド物割引とか、スポーツクラブの利用権とか、そんなやつだ)それを囲った上でこう付け足す。 「でも、今まで言わなかったサービスが2つあるんです。それは、この会員証には期限がない、ということ。そして、担当者がつくことなんです。」 あとは数直線に、君のこれから50年のグラフが描かれ(ちゃんと10年後には「けっこん」なんて書かれちゃったりもしている)、この会員証がどんなに有効なものか説明された上で、キメのセリフだ。 「これらを運営する上で、ただと言うわけには行きませんので、実費等を頂いています。でも、一生もらうというのも大変でしょうから、4年間に圧縮して頂いています。」そして、その実費の怪しい計算が始まる。1日経費が31円、てところから始まって、手数料やらなんやらで、なんと月2万円弱。 |
おっと、腰が引けたね。だって最初は「セールスじゃない」なんて言ってたしねえ。でも、ここで「一旦家に帰って考えさせてください」って言ってもダメだよ。彼女は知ってるんだ。 「今悩んでも、1週間先に延ばしても、結果は同じです。さあ、今!」 なにまだ渋ってるんだよ、そんなことやってると、最後通牒突きつけられるぞ。 「このサービスは、私と日吉さんの信頼関係で成り立つ物ですから、私が気にいらなかったら無理に契約して頂かなくてもかまいません!」 ほらほら、君も入るんだ。後は契約書にサインするだけだから。 よーし、これで君も、彼らの仲間になったね。おめでとう! え?俺? いやあ、実は入ってないんだ。この記事の取材のためにそこ行ったら、取材ノート取り上げられて全部破かれた(だから詳しく内容が書けなかったんだね)うえに、 「もう2度と来ないでくださいね」なんて言われているからさ。(そうそう、「セールスじゃない」というセリフに文句言ったら、「今時、ただでサービスが受けられるとでも思ってたんですかあ」と、彼女にいわれたよ。それもつけ加えておこう。) というわけで、会員数30000人弱のところ、1ホテル定員6人で、70弱しかホテルなかったりするそうだけど、親族等のビジター利用(約4名まで、定員に含まれる)もできるそうだから、もし予約できたら教えてくれ。そのとき僕は近くの国民宿舎でも予約するよ。あっちなら食事もついてるしね。 じゃあ、また。(最後にもう一回言っておくけど、今回の文章(特に本文)はあくまでフィクションだから、抗議されても……。) |
まだまだある、こんな「幸せになれる」会員権・学校
- Wクラブ
- 昔は「Tレンディクラブ」と名乗っていた。NTTキャプテンシステムで公正なホテル予約を実施しているのも売り。政経学者のM添が顧問をやっている。
- W総合学院
- お馴染み、新宿区役所隣の変な学校。「スイス方式」の英会話教育がうりだが、勧誘は「消費者センターに行かないで」と職員に頼まれるほどエグかった。
- Tアカデミー
- 総合学院Jの名前が親会社のせいで変わっただけ。「英会話、パソコン、ワープロ」の内容は、W総合学院に似ているが、こっちは新宿西口NSビルにある。
- Hフィールド
- 帝王学を学べるという不思議なシステム。ファックスで月2回総合情報が送られてくるサービスが20万(機械込み)という話。勧誘時の白抜き文字はあまりにも有名との話も。
- K應大学
- 現代社会に必須の資格「大卒」が得られる。設備は意外と充実しているが、書類審査(入試)と授業料の高さがネック。
「るが、書類審査(入試)と授業料の高さがネック。