文化のあだ花。そう言っても全く異論のでないものが日本にはたくさん存在する。βのビデオ、ランバダ、徳川埋蔵金……。言われるまでそんなものがあったことすら忘れているものばかりだが、意外と時代を象徴するものなのかもしれない。
 今年はそんなものの当たり年だったらしい。そうなりそうなものがいくつもある。H jungle with T、尊師マーチ・エンマの数え唄、ゴーマニズム宣言……。
 しかし、もし「輝け!95年のあだ花!」をやったら、ぶっちぎりで1位になれそうなもの、と言えば……、

バーチャルボーイ

 あなたの周りに、この任天堂の出したゲームマシン、バーチャルボーイ(以下VBと略記)を持っている人はいるだろうか?たぶんいないはずだ。95年はプレステ、サターン等、新ゲーム機が多数発売され、特に両者はそこそこ売れているのに、このVBの売れ行きと言ったら……。
 どうして、そんなに全然売れてないのだろうか?基本仕様に関しては、画面が赤1色、4階調という点を除けば、そんなに見劣りのするマシンではないと思える。音響も擬似的に立体に聞こえる工夫がなされており、一応、画面もきちんと立体的に見える。CPUだってはやりのRISCプロセッサなのに、だ。
 本当にVBはつまらない機械なのだろうか。実際に試してみないで、そういうことをいうのは反則だと思う。というわけで筆者も体をはって確かめることにした。
 まず、VBの入手だ。希望小売価格は2万円近いが、市場価格は最低5千円台。入手に失敗したら、非常にいやな値段である。
 当然ソフトは別売りだ。筆者は秋葉原まで出かけて買ってきた。安いもの、任天堂の出しているもの、立体物、スポーツ物と4本かって合計3480円。全部新品。あまりに安すぎる。
 さて、まず1本目のソフト「Vテトリス」を起動する。これは唯一480円で売っていたソフトだ。まあ遊べれば儲け物、といった気分で買ったソフトだったが、実態はそんな考えすら甘かった、と思わせるものだった。
「背景に奥行きがある」こんなものをウリにしてどうする気なのだろう。これじゃあ対戦ができるだけ、ゲームボーイのほうがましである。作った人間はとりあえずテトリスができればいい、とでもおもっているのだろうか?そうに違いない。あまりに情けない。
 2本目のソフト「GALACTIC PINBALL」。ピンボールソフトで、任天堂の出しているやつである。GALACTIC、というだけあって、ボールの挙動が現実離れしている。一旦落ちたはずのボールが元に戻ってきたり、変にかくっと曲がったり、私には耐えられないしろものだ。本家本元にやる気はあるのかと言いたくなる。
 最初の2本の出来を見ただけで、もうだいたいこのマシンがどういう扱いだかわかったような気がした。実際のところ、他の2本に関しては、まあまあ、という印象だったが、モノクロの画面を覗き込んでわざわざするほどのソフトでもなかった。要するに、どうでもいい機械なのだ。そんなわけで、その後私はVBにほとんどさわっていない。赤くて目立つし、非常にじゃまである。ソフト代がもったいなくて、とてもくやしい。
 やはり、バーチャルボーイというのは95年最大のあだ花に違いない、と強く感じた。噂では、とあるところが参入しようとして買った機材が、あまりの状態にそのままお蔵入りになってしまったという話もあったりする。やはり、来年4月に出すなどと言っているNINTENDO64までのつなぎに過ぎないマシンなのだろうか。そうなんだろうなあ。